豊漁大学鉄道線

 津喜県仁江市。市の中心にあるターミナル駅仁江駅には、NTR線と両得電鉄が乗り入れ、電車がひっきりなしに発着しています。その多くが8両や10両など長い編成で運行されているのですが、駅をじっくり観察すると、その端っこから2両編成の短い電車が出発していくことに気が付きます。では、この短い電車はどこへ向かうのでしょうか。

 両得電鉄から引退したはずの50系電車。駅の端っこの短いホームに、2編成並んでいます。ベルが鳴り、ドアが閉まると発車します。電車はゆっくりと加速していき、カーブを曲がって両得八田山線から離れていきます。家が線路すれすれにあり、スピードは遅いながらなかなかスリリングです。

 しばらく進むと、電車が止まりました。一つ目の途中駅「横渚」です。横渚と書いて「よこすか」と読みます。駅は1面1線。すれ違いはできません。自動改札もなく、切符は車掌が回収します。ICカードも使えるらしく、簡易的なタッチリーダーもあります。この駅を出ると、「この先急停車することがありますので、手すりやつり革におつかまりください」とのアナウンスが。

 道路が見えてきました。電車はゆっくりとこの道路の中へ進んでいきます。道路を斜めにわたるのかと思いきや、電車は道路の真ん中を走っています。あれ、これって路面電車じゃ…… 今乗っている両得50系は一両の長さが20m。これが二両連結しているので40mの長さになります。電車としては短いですが、道路を走る乗り物としては非常に長いです。同じく津喜県の検見浜エリアを走る連接バスが確か、18mですので、それと比べても長いことがわかると思います。

 路面電車に変身した電車は、海沿いの道路をゆっくりと進んでいきます。時には車と一緒に赤信号で停止し、青信号になれば加速がいい車を追いかけっこです。電車は車よりも加速が遅いので、あっという間に後ろにいた車に抜かされてしまいます。この併用軌道区間ですが、数分程度で終わりを迎えます。再び道路から離れた電車は、家の壁と海岸に挟まれた単線の線路を走っていきます。

 「夏になったら海水浴客でにぎわうんだろうな」

 そんなことを考えていたら、二つ目の途中駅「磯村」につきます。駅そのものは横渚駅と大して変わりませんが、海に面しているため眺望が最高です。そういえば、なんかのドラマで見たことがあるような……

 磯村駅を出た電車はすぐに上り坂を進みます。高架区間に突入です。坂を上り切ったらすぐさまトラス橋の中へ。線路と一車線の道路が並んでいます。下には川が…… と思いきや、左右を見るとそこは海。電車の前のほうを見てみると、大きな建物が丘の上にある島が見えてきました。電車はこの島へと一直線。300mほど進んだところで、島の中に入りました。

 「まもなく、仁江総合病院に到着いたします。診察券、紹介状などお忘れ物がないかご確認ください」

 丘の上の建物の正体。それは、仁江地区最大規模の病院、仁江総合病院でした。この仁江総合病院は、豊漁大学の附属病院。今まで乗ってきた電車の正体は、豊漁大学が敷設した「豊漁大学鉄道線」だったのです。


※当ページの内容はフィクションです。

当ページ最終更新日 2019年09月08日

当ページ公開開始日 2019年09月08日