常丸(新)7000系

新たな答え

ここ10年間の常丸鉄道は、それほど大きな変化がなかった。一方、ライバルに目を向けると来戸急行電鉄が両得電鉄になったり、NR常盤本線でスピードアップが行われたりなどの変化があった。これら二つのライバルはスピードアップ、ダイヤ改善などで競争力が増しており、その一方で常丸鉄道の利用客数は若干減少していた。

そこで利用客数減少を食い止めるため、ちょうど2019年3月に予定されていた発藤~小動間の直流化に合わせて新型通勤電車を登場させることとなった。

新7000系は従来にはない設計を取り入れた電車である。大きく変化したのは内装で、座席がロング・クロス転換座席となった(一部座席を除く)。このシートの採用により、乗客が多い時間はロングシート、少ない時間はクロスシートでの運行が可能となったほか、2020年春より予定されているライナー列車にも充当する予定だ。

走行機器にも最新の技術が用いられている。例えばモーターはPMSM(永久磁石同期電動機)を採用し、低騒音化、メンテナンスフリー化などを実現している。PMSMはその特性上、1つのモーターに対して1つのコントローラーがなければならない(5000系は8つのモーターを1つのコントローラーで制御する)。

そのため、コントローラーの数が増え、車両重量が重くなったり床下のスペースがなくなってしまったりする。この問題を解決するため、VVVFインバータには従来よりも小型軽量なSiC-VVVFを採用した。

最新なのは機器だけではない。スタイリングも従来とは異なるデザインとした。5000系とM6000系ではドア部分にフィルムを貼り、それらを結ぶように横帯を配した。新7000系もこれらのデザインを引き継ぐこととなったが、ホームドアの整備により窓下の帯が隠れてしまうことがあることから、ドアが開いているときでもカラーを認識できるようにした。近年はドアだけでなくドア周りにもカラーフィルムを貼る例が増えているらしい。

車両メインカラーも変更した。従来の車両メインカラーには黄緑などが用いられていたが、その色合いはくすんでいた。これを明るいエメラルドグリーンに変更し、乗客へのアピール、そしてロング・クロス転換座席車両であることが一目でわかるようにしている。

ゆくゆくは……

常丸鉄道は乗客数が減少傾向にあり、決して余裕があるわけではない。それでも割高なPMSMモーター(と制御システム)、ロング・クロス転換座席などを採用したのは、どうやら現在運行されている特急をこの車両で置き換えるからといううわさがある。

2019年1月現在、常丸鉄道の特急は堀端~小動間で運行されている。この区間は全線電化区間であるが、それにも関わらずディーゼルカーで運行されている。ディーゼル特急車両キハ500系は、不定期運用で鼓動以北の非電化区間にも入線するが、その回数は年々減少している。

ディーゼル車両はもちろん非電化区間に入線できるというメリットがあるが、その一方でデメリットも多数存在する。例えばメンテナンスの手間がかかることや、排気ガスの関係で地下区間への入線には適していない(キハ500系も地下鉄対応設計だが永京地下鉄側から乗り入れ禁止扱いとされている)。

そのキハ500系は1993年に登場した。性能自体は高性能な外国製エンジンを搭載していることから問題ないが、車両の老朽化などが進み、そろそろ新型車両が導入されてもおかしくない頃だ。

しかし、常丸鉄道の特急利用客は減少傾向にある。指定席車両も連結されているが、自由席のほうが利用率が高いらしい。そしてライバルの高速バスが価格を武器に対抗している。そこで、特急を急行に格下げ。その代わりに堀端~小動間の急行を毎時3本体制とし、現在1時間に1本しか急行が走っていない初藤~小動間の利便性を高めるという話があるらしい。

細かいこだわり

新7000系は2010年代の通勤電車にしては、細かいこだわりが多いなという印象を受ける。例えばフロントガラスは、三次曲面ガラスを採用している。だからなんだって話だが、最近の電車は平板ガラス、あるいは二次曲面ガラスを採用することが多い。これはガラス交換の手間を省く(平板ガラスだと交換するときの人手が少なくても大丈夫らしい)ことやコストダウンなどの理由がある。

三次曲面ガラスは、手間もコストもかかるわけだが、それでも大きなメリットがある。それは「丸みを帯びたフロントデザインにできる」ということだ。最近の電車は平板あるいは二次曲面ガラスを用いていても丸みを帯びたフロントデザインにしている車両がある。しかし、常丸鉄道ではガラスも三次曲面であるほうがかっこよく、従来とは異なった印象にできるのではないかと考えたようだ。「デザインを担当したのが比較的若いチームで、彼らの熱意に負けてしまいました」とは長年車両設計を担当する人のつぶやき。


※当ページの内容はフィクションです。

当ページ最終更新日 2021年01月27日

当ページ公開開始日 2019年01月03日